2013年4月23日火曜日

米Yahooが17歳の少年に社運を賭ける、新体制マリッサ・メイヤーの一手




昨日、史上最年少(15歳)で資金調達を達成した少年ニック・ダロイジオが、17歳で米Yahooへ事業をバイアウトしたというエントリをお届けしました。

そして本日(米国時間4月22日)、彼が制作したアプリ(summly)が米Yahooのサービスに統合され、ローンチされたと公式ブログで発表されました。

しかも、今回はCEOであるマリッサ・メイヤー自らコーポレートブログを綴る本気っぷり!

ブログ内では、"this game-changing technology"とニックのテクノロジーを称賛(買収を自画自賛) しているほどです。

もう、米Yahooは17歳ニックが生み出したプロダクトに社運を賭けていると解釈して良いのではないでしょうか。というのも…。


米Yahooは、世間がデスクトップからインターネットを閲覧していたブラウザ時代に、米国においてポータルサイトナンバー1の地位を確立した企業ですが、昨今ではモバイルへのシフトに失敗し、イケてないサービスを提供し続ける時代遅れの企業との烙印を押されてしまいます。

その状況を改革すべく、2012年7月にマリッサ・メイヤー(Marissa Ann Mayer)が米YahooのCEOに就任しました。(現在37歳)

マリッサは、まだGoogleが社員20名程度しかいない規模の段階で、女性エンジニアとしてジョインした、Google生え抜きの技術屋です。Googleで、ウェブ検索、Gmail、Googleニュースなどを担当していた経験がYahooのモバイルコンテンツ改革に役立つと評価され、Yahooのトップに迎えられました。(マリッサはオファーがあった段階でGoogleの副社長)

先述しましたが、米Yahooはモバイルの分野でダメダメの状態。
世の中は既にモバイルの時代であることは明白で、将来確実にモバイルはパソコンの保有率を上回るでしょう。

その状況下で、コンシューマー向けのメディア事業を主力にしている企業がモバイルでコケるということは、企業の死を意味します。


↑就任後のFortune誌の対談でも米Yahooにとって最重要な戦略はモバイルであると言及。

米Yahooはメリッサ就任後、StampedSnip.italikeJybeといった設立3年以内のデザインに定評のあるモバイル分野の企業を次々に買収していきます。

その5つ目の買収先として選ばれたのが17歳のニックが開発したSummlyなのです。

他の4社の買収額は数百万ドル〜1000万ドルであるのに対して、Summlyは最高値の3000万ドルで買収されていることから、このアプリの期待の大きさが伺えます。


買収の成果は、今回ローンチされた新しいニュースアプリのデザインに表れているのではないでしょうか。(※現在ダウンロードできるのは米国のみ)


↑まだ触っていないので、確かなことは言えませんが、かなりイケてそうです。


ちなみに以前までのインターフェイスはこちら…。↓


確かにだせえ!

米TechメディアのTNW(the next web)も記事の中で、
"The original app looks as if it was designed by a low-grade, code-free app builder, and features a dull interface, an obnoxious color scheme and poorly aligned type."
との酷評っぷり。(元記事)

意訳しますと、
『元のアプリは、まるで質の低い無料のアプリ制作ソフトを使用したかのようだ。インターフェイスの形も酷いし、おまけに不快な色使いに、センスのない並列的な仕様!(ほんとに酷いな…)』
といった感じでしょうか。


米Yahooのみならず、企業は規模が大きくなると、その図体のデカさからイノベーションを起こし難くなるようです。

この点に関しては塩野誠氏の言葉をお借りします

『一般論として企業は大きくなると、創業時、急成長期のアグレッシブさが失われ保守化するものです。創業時であれば創業者の顔やビジョンが一平社員にも見えるものですが、組織が大きくなるにつれ社員の質も変わっていき、大きくて安定してそうだからという理由で入社する人が増えてきます。これは当然のことではありますが、規制などによって守られた業種でなければ、企業は何らかの差別化や新しい価値提案を行っていかなければ成長ができません。
企業が新しいことを産み出していくためには、「小さくいる」ことが非常に重要です。組織のシステムとして、大きくなりすぎたら小さな単位に分割し、権限移譲していく方法以外には、つねに新しいものをつくり出すことはなかなかできません。大きな組織の一部からまったくほかの社員や事業部の「空気を読まない」新しいものをつく出すことは困難です。
たとえば米国テクノロジー系企業では、人材や技術を買うために行う企業買収がありますが、これはマイクロソフトやグーグルなど、大きくなってしまった組織が、周囲のベンチャー企業を研究開発会社として使っているとみることもできます。大きくなった企業が自社内では機動的に新しいものを産み出すことはできないと考え、周囲のベンチャー企業でよいものができたら、人材ごと買って自分のものにしてしまうという考え方です。』


今回のケースは、米Yahooがモバイル分野での生き残りを賭けた買収と解釈して間違いはないでしょう。マリッサ新体制結成後、最大の一手です。
Sumally買収後、天気メールアプリの各インターフェイスも大幅に改善されています。




いやー、17歳の高校生が生み出したアプリが、IT業界の巨人Yahooの社運に大きく影響を与えるとはすごいですね。これぞシリコンバレードリームと言うべきでしょうか。

ちなみに、彼はBloombergの番組でまた自分で会社を作りたいと言っていました。
やるべきだよ!彼の今後に期待です!