2013年11月26日火曜日

数字で振り返るシリコンバレーVCの投資傾向、過去5年間で計3兆円の投資と3308件の投資案件



シリコンバレーの資金調達関連のニュースを聞く度に、動く金額のケタが日本の場合とひとつやふたつ違うことにいつも驚かされます。

そこで、シリコンバレーのベンチャー・キャピタル(VC)の実情が分かるデータがないかな〜と探していたところ、調査会社のCB InsightsがORRICKS、SVB、GLG Shareの協力を得て定期的に発行している、イカしたレポートThe Silicon Valley Tech Venture Capital Almanac』を発見しました!

2009年から2013年までの過去5年間のシリコンバレーVCの動向をグラフ化した示唆に富むデータです。今回はその一部をちょこっとだけ紹介したいと思います。


2013年は過去5年間で最高の投資金額、案件数の見込み


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まず、こちらのグラフは過去5年間のシリコンバレーの投資金額、投資案件数を表したものです(2013年度のグレーの部分は予想値)。※今回のレポートでいう投資案件とは、実際に投資を実行した案件を指します。

2009年から2010年あたりでは1年に450〜550件だった投資案件ですが、2013年度は934件にのぼる見込み。これは過去5年間で最高の数字です。加えて、2013年度は投資金額も過去最高の水準で、1年間でおよそ8900億円が投資される見込みなのだとか(1ドル100円計算)。

ちなみに、2013年度のデータを365日分で割る単純計算を行うと、1日に平均約2.5件、約24億円が投資されていることになり、1件あたりの投資規模は平均約9.6億円になります。

また、過去5年間の投資総額はおよそ3兆円、案件数は計3308件というから驚きです。


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次に、上記のグラフは投資金額、投資案件を四半期(Q1〜Q4)に分けて表したものです。各年度とも、なぜかQ3の時期に投資が活発に行われています。※2010年度だけは例外(欧州ソブリン危機の影響?)。

2013年度Q3の投資金額・件数は過去5年間で最高の水準で、タクシー配車サービスUberの約258億円の調達や、ビックデータ企業のPalantirの約197億円の調達、企業向けにストレージサービスを提供するPure Storageの約150億円の調達など、大型案件が数字を押し上げたと見られているようです。


シードステージへの投資が活発化?


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こちらは、各投資ステージ毎に投資金額の割合を表したグラフです。スタートアップへの投資は、シードから始まり、シリーズA→B→C→D→Eの順で必要に応じて投資のステージを増やしていきます(一般的にはステージを上がる毎に投資金額はデカくなる)。また、ここではシリーズD以降をレイトステージと定義しています。

当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、レイトステージの占める金額の比率は高く、2013年度は全体の投資金額の40%近くを占めているようです。

もうひとつ注目できるのは、近年シードステージへの投資比率が徐々に増加しており、2013年のQ3では全体の4%を占める規模になっています。(ただ、属性不明"Unattributed"の数値が2009年〜2011年の間に10%前後で存在しているため、そこの数字にシードステージの投資が分類されてたんじゃないの?という疑問も残ります…)


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また、こちらのグラフは各投資ステージ毎に案件の比率を表したもの。2009年度に7%であったシードステージへの投資案件は、2013年度には全体の29%を占めるまで増加しています。(ここでも気になるのが2009年〜2011年の間に10%前後ある属性不明レイヤーの存在で、そこの部分にシードステージの投資が分類されていたんじゃ?という疑問が再び…)


インターネット、モバイルの分野の拡大とヘルスケア、エネルギー分野の縮小


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上記のグラフは、投資金額の割合を事業分野別に表したものです。2009年度に50%近い割合をしめていたヘルスケア、エネルギー分野の投資が縮小傾向にある一方、インターネット、モバイル分野の投資が増加していることが分かります。意外にもハードウェア分野の比率は大きな変化なし。


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案件ベースでの割合を見ても、2009年に39%を占めていたヘルスケア、エネルギー分野の投資は2013年には半分近く減少。特にモバイルの分野が増加が著しく、2013年度ではおよそ5分の1を占める規模になっています。


まとめ

・シリコンバレーVCの投資金額の大きさと、案件数の多さは驚異的(過去5年間で約3兆円の投資と3308件の投資案件)。

・2013年は投資金額、案件数ともに過去5年間で最大規模。

・近年シードステージへの投資が増加。

・モバイル分野への投資が増加、ヘルスケア、エネルギー分野は一段落ついた感じ。

今回紹介した数字で注意していただきたいのは、これらのデータはVCからの投資に限った数字であるということです。つまり、前回のエントリで紹介したようなエンジェル投資家(個人の投資家)関連の数字は入っていません。

また、非公開の案件も少なからずあるので、実際の投資金額および案件数はもっと多いことになります。シリコンバレーの規模感半端ない!

更なる詳細を知りたい方は、HPから直接レポートをダウンロードしてみてください。

 

【グラフ参照元】
The Silicon Valley Tech Venture Capital Almanac

【関連エントリ】
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